Asahi Business Consulting|朝日ビジネスコンサルティング

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第3話 「改革のシナリオ」

ケース2.~某ビジネスホテル経営者の挑戦

 創業15年のビジネスホテルの収益改善をコンサルタントの山川へ依頼した社長の船越は、社長室にこもり人選を行っていた。
 金融機関から求められた中期経営計画の立案に適切なメンバーを考えている。前回の山川との打ち合わせで(前号を参照)、今、当社が第一に検討すべきことは、コスト削減策ではなく、収益拡大策、つまり営業戦略の建て直しであることを認識した。
 船越は悩む。
 「これまでの営業スタイルは支配人のこれまでの経験と勘によって行われていた。どちらかというと待ちの営業スタイルである。顧客ターゲットを明確にした広告宣伝を行うわけでもなく、インターネットでの宿泊申し込みも始めたが、積極的な展開ではなく時代の流れの中で始めた一つの手段だった。これまで当社は顧客を明確に把握していただろうか。明確になった顧客に対し適切なタイミングで適切な情報を提供していただろうか。積極的にPR出来たのであろうか」
 「こう考えると、今回の人選は難しいぞ。これまで営業面は支配人任せにしていたがどういった人間をメンバーにすればいいのか検討つかない」
 船越は再度、山川に相談した。山川は答えた。
 「船越社長、何も迷うことはありません。今まで営業を組み立てられてきた支配人を中心にしましょう。今までと同じ結果にはなるはずがありません。今回のプロジェクトでは、すべてを数字で表すことを考えています。経験や勘で考えられた施策についても、数字で検証が出来、成果が出るとの判断なら実行すればいい。これまでのように、目の前の課題を解決するだけの思いつきの施策を実施することはありません。
 支配人をサポートする若手をメンバーに加えてほしい。支配人の感覚とは違う、新しい発想を持っている人間がいい。また、その方が顧客ニーズや顧客の思いをつかもうとする思考があれば、もっといい。今回のプロジェクトでは、この数字で施策を考えることを大切にしたいと考えています。」
 人選は終わった。これまで営業を考えてきた支配人の海田、それから、フロントを中心に動いてきた下川の2人である。山川と2人は打ち合わせを始めた。2人を前に山川はこう話した。
 「今回、当社の中期経営計画を立案することになりました。これまでの損益状況などの推移や現状の業務の流れを確認させてもらいました。その中で浮き彫りになった課題は営業戦略の再構築の必要性です。現状は、利益の減少が見られています。利益を確保する、つまり収益を安定させるためには、コスト削減策と売り上げ増加策の2つのパターンが考えれますが、コスト削減策は実際に効果を出しています。だからこそ、今、営業戦略について考え、新しい方法を検討しなければなりません。そのためには、まず現状を把握することから始めましょう」
 海田から質問が出た。「これまでの営業戦略として、広告を出すとか旅行会社へお願いに行くとかインターネットの活用を取り入れるなどの施策を実行してきています。これらを実行して現状があるのだから、それほど効果のある策が考えられるとは思いませんが」
 山川は答えた。「売り上げを伸ばす方策がないと言うのであれば当社は存続できないのではないですか。現状の売り上げでは経営的に非常に厳しいのです。コスト削減策を実施していますが、これも限度がある。生き延びるには売り上げを確保していくしかないのです。再度見直す必要があり、私には、まだまだやるべきことがあるように感じれますが…。」
 山川の「現状が、考え抜いて出された施策とその実行によって得られた結果であれば、生き残れない」との言葉に2人はがくぜんとした。
 さっそく、2人はこれまで行っている営業活動を洗い出す作業に入った。既存顧客へのアプローチ、新規顧客獲得に向けた活動とその結果。一覧にまとめようと各種の計数を把握する段階で、2人は再びがくぜんとした。実行した施策に対して、結果にあたる実績がどこにも存在しないのである。実績は、損益計算書に記されるまとめられた売上高であり、各種の施策ごとの数字は、存在しない。つまり、これまで当社では確認作業が行われていなかったのだ。しかし、検証をしなければ前へ進めない。
 多くの時間を、まとめられた数字から紐解く作業にあて、何とか施策とその実行結果の一覧が出来上がった。内容はショッキングなものになっていた。売上高が右肩下がりだったものの、客室単価は現状を維持できており、稼働率の低下がその原因だということは容易に理解された。しかし、新規顧客/既存顧客という分類でこれまでのトレンドを見てみると、既存客の単価はここ数年下落傾向にあり、新規顧客の単価が高い推移を示していた。そして、高い価格で宿泊した顧客のリピート率は極端に低い。また、新規顧客の数は年々下がっている。顧客獲得のための施策を実施し、競合ホテルの増加である一定の効果が出ている。客室単価は、コンセプトを理解してくれた顧客によって支持され、維持できている。そんな風に考えていた2人にとって、信じられない結果だった。
 結果を持ち寄り、山川、海田、下川の3人は打ち合わせをした。これまで取ってきた顧客獲得施策、価格戦略は、自分たちが意図した方向ではない結果を残している。コンセプトに理解を示してくれた顧客によって客室単価が維持され、競合ホテルの乱立によって稼働率が低下している。つまり、新規顧客獲得のための施策に重点を置くべきだとの考え方は間違っていたのだ。客室単価の維持が、他の低価格ホテルとの差別化要因になることは間違いがない。しかし、それは顧客に支持される価格でなければ成り立たないはずだ。結果として一度宿泊した顧客が宿泊するには価格を下げなければならない。これまでの価格で宿泊した顧客は、宿泊後に離れてしまう。何もかもが、想定外の現実である。頭を抱える2人に山川は言った。
 「これが現実なのです。ようやく現実が見えた。これが成果です。改革のシナリオは見えました。つまり、今の価格を維持しながら宿泊していただけるホテルにする。手段はこれから考えていきますが、提供するサービスとそのサービスに対する報酬の価値を一致させる。逃げることの出来ない現実を前に、知恵を絞り、何を行っていくべきかを考えていきましょう」

文/朝日ビジネスコンサルティング・古川 武史
takefumi.furukawa@asahibc.co.jp

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