Asahi Business Consulting|朝日ビジネスコンサルティング

朝日ビジネスコンサルティング 福岡・九州を中心にサービスを提供するコンサルティング会社です

Asahi Business Consulting|朝日ビジネスコンサルティング

朝日ビジネスコンサルティング 福岡・九州を中心にサービスを提供するコンサルティング会社です

第4話 「改革の実行」

ケース2.~某ビジネスホテル経営者の挑戦

 創業15年のビジネスホテルの収益改善に向け、現状把握から解決すべき課題が明確になった。検証を進める上で、これまで考えられてきた収益モデルが変化していた。
 これまでは、既存顧客のリピート利用で客室稼働率・客室単価を維持しており、競合ホテルの乱立により新規顧客獲得に苦戦が起こり、稼働率・単価共に下落傾向であるとの仮説に立脚した形で販売促進活動が行われていた。しかし、実態は違った。現実は、新規顧客の獲得で苦戦はしているもののこれまでの稼働率と変化がない。また、客室単価の下落も多少はあるものの全体に与える影響は小さい。逆に、既存顧客のリピート率が下がっており、単価も大きく下がっている(前号参照)。
 社長の船越は、現状認識を一新し、今後の取り組みを考えるメンバーに調査から加わっている支配人の海田とフロントの下川を指名しただけではなく、自身もプロジェクトに強く関与し、実行スピードを上げることに注力することとした。また2人に対して、「今回の現状認識に沿った解決策の立案と実行プランを早期に検討、実行する。今回の改革がスタートだ。考えたことを信じ、スピードを上げて実行する」と言い切った。
 この状況の中で、プロジェクト会議は毎日、深夜まで続く。プロジェクトは、新たな現状認識の上に改革プランとその実行をしなければならない。
 コンサルタントの山川は言う。
 「これまでの活動を評価するつもりはない。今、問題となっている客室単価と稼働率の維持・向上を図る施策を考える。そのためには、顧客という広い捉え方ではなく、小さい単位で顧客をとらえ直しましょう。当ホテルを利用したことのある顧客を既存顧客として、初めて当ホテルを利用された顧客を新規顧客として定義します。さらに、それらを利用目的別に整理していきましょう。このように顧客セグメントを小さく絞っていくことで打つ手が見えてくるはずです。プロジェクトでは、これからは小さく考えることを念頭においてください。大きな話は、今の時点で必要ではない。常に小さな単位で考えるのです」
 ここから、海田、下川の数値での検証が始まる。
 既存顧客の単価とリピート率は、両方とも下がっている。さらに、利用目的をビジネスユースと、観光、その他に区切ると特にビジネスユースの顧客のリピート率が大幅に下がっている。これら顧客の属性を見てみると、30代~40代の出張などで一番忙しいといわれるビジネスパーソンの層が多い。
 一方、新規顧客を見ると、単価は既存顧客よりも高い金額で推移している。利用目的は、ビジネスも観光なども同等の利用率である。顧客属性を見ると、ビジネスユースについては、既存顧客と同等の30代~40代が多い。一方、観光などの目的では若年層が目立つ。高い年齢ではなく、ほぼ20代の顧客で占められていることが理解できる。
 山川は、この報告を受け、さらに質問を繰り返す。「では、なぜこういう現状になっているのですか。ビジネスユースの顧客のリピート率が下がっている原因はどこにあるのですか」。海田が答えた。「法人の出張などの回数が減ったことが最大の要因だと考えますが、その他、競合ホテルの乱立で、目新しさを求めて、これまで利用されていた顧客が離れているのではないかと考えています」
 山川はさらに質問を続けた。「出張などの回数が減ったことは大きな要因ですね。しかし、会社が減ったこととは違う。これまで利用がなかった法人へのアクションは必要になりますね。それから、ほかのホテルを利用された顧客は、再度、戻ってくるのでしょうか。それともほかのホテルをずっと利用されるのでしょうか。利用するホテルを選択する基準は、どこにあるとお考えですか」
 海田は答えた。「指摘の通り、これだけの事業所があるにもかかわらず、これまで利用された顧客企業を中心に考えていた点はあります。今回のプランで検討する項目です。それから質問への回答ですが、考えていませんでした。そもそもなぜ、これだけのホテルがある中で、当ホテルをご利用になられるのかについて深く考えたことがありませんでした」
 「顧客に選択してもらわなければ、収益は確保できない。当ホテルの場合、価格を下げることをせずに、利用してもらい利益を確保しなければならない。顧客セグメント別に選択基準が分かれば、それに合わせた打ち手も考えられる。顧客アンケートハガキも取ってありますよね。山積みにされているが、この中にも大きなヒントは眠っている。問題意識を高いレベルで持っていれば、多くのヒントは現場の中にあるはずです」
 このような打ち合わせが、朝から深夜、時には朝になるまで数週間も続いた。プロジェクトメンバーの2人だけでなく、社長の船越も打ち合わせに参加した。海田も下川も、ホテルに入社して以来、これほどまでに議論を続けたことがなかった。
 ようやく、具体的な施策が立案された。施策の内容は、これまでの議論のように顧客を小さく考え、その中で効果の大きいと考えられたものによって構成された。具体的なアクション内容については、誰がいつまでに誰に対して、どのようなアクションを取るのかといった詳細レベルまで落とし込まれた。
 概略は次の通りである。
●既存顧客の収益獲得に対して
・法人顧客に利用率の低下に対して ビジネスユース客へのオフィス環境の構築(LAN、コピーなど)
 会議室スペースや作業スペースの提供など、新たなビジネス関連サービスの開始
・一般顧客の利用率の低下に対して
 顧客別の記念日プランなどの構築
 モニタリング制度の構築など、当ホテルオリジナルサービスの開始と顧客が作るホテルへのイメージ戦略
●新規顧客の収益獲得に対して
(詳細は割愛)

 既存顧客と同等にセグメントを小さくし、広告形態の見直しや各種プランを構築するとともに、法人需要の掘り起こしを積極的に展開するプランが出来上がった。
 これらのプランに目をやりながら、山川は海田、下川の顔を見つめた。そこには、疲れ果てた様子の2人がいた。2人共、肉体的にも精神的にも極限状態にあるだろうことは容易に理解できた。しかし、ここで手を緩めるわけにはいかない。
 山川は言った。「ようやくスタート地点に立ちました。これからが改革のスタートです。仮設検証を行いながら立案したこのプランを実行していくこれからが、この数週間の活動を評価できる唯一の方法です。ここまでのがんばりを成果として残しましょう!」
 これからが、本当のスタートである。

文/朝日ビジネスコンサルティング・古川 武史
takefumi.furukawa@asahibc.co.jp

このページの先頭へ戻る

朝日ビジネスコンサルティング株式会社 〒812-0011 福岡市博多区博多駅前 2-2-1 福岡センタービル 5F TEL 092-436-4141 FAX 092-436-4143

Copyright © 2005-2017 Asahi Business Consulting Co., Ltd. All rights reserved.