Asahi Business Consulting|朝日ビジネスコンサルティング

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第2話 「何を変えるのか?」

ケース3.~某建設業経営者の挑戦

 天野は自宅の寝室にいた。ベットに横になり思いをめぐらせていた。
 終日前にコンサルタントの山川に「変えるべき現状は、社長自身の考えや行動である」と言われたものの、自分の何を変えるべきなのかということが見えてこない。この間も、受注見積もりと受注金額の差、つまり粗利は、想定どおりに推移をしているとの報告を受けている。しかしながら、工事完了後の実行原価と受注金額を比較するとほぼ差がない工事もちらほら見えてきている。毎年のことながら、工事完了時点になると見積もり金額と大きな差が現れ、営業利益ベースで赤字という結果になる。この現実を見て、担当部長に「なぜそうなるのか?見積もり予算の精度を上げろ!コストを徹底的に抑えろ!」と指示を出す自分も毎年同じように感じている。
 「いったい何をどうすればいいんだ。山川さんは自分を変えろと言うけれど、組織である以上、担当部長に指示を出すのがおれの仕事ではないか。その担当部長が結果を出せないのであれば、担当部長を代えるしかない…。社長として、組織を変えろということなのか?」こう考える毎日が続き、今日も寝ることが出来ない天野であった。
 翌朝、天野は意を決して山川へ電話をした。
 「山川さん、あなたに言われた自分自身を変えろという言葉をずっと考えているが、もう少し話をしたい。時間を取ってくれないか」
 山川は答える。「そろそろお電話をいただくころかと思っていました。私のほうも御社から頂いた財務諸表を元に分析を行っています。明日には終わりますので、明後日にでもどうでしょうか」山川の声は、この電話があることを想定したかのように落ち着いていた。
 約束の時間になり、社長室の天野のもとに山川が訪れた。
 「山川さん、本日はありがとうございます。先日、お電話でもお話したようにあれから自分自身で何を変えないといけないのかということを考え続けています。この間の会社業績も前年と何も変わらず、見積もり段階で確保できるだろうと想定している利益を完成工事段階で大きく下回るものが出てきており、非常に厳しい状況です。担当部長に何度も確認したが大きな改善は得られない。変えるべきことは、この役に立たない担当部長なのではないかという思いに行き着いてます。組織を大きく変えれば、当社は利益を生み出せるのではないかと…」
 山川は天野の言葉をじっと聞き、ゆっくりと話し始めた。
 「その結論に行き着いたということは、私が指摘をさせていただいた点へは行き着いていないですね…。天野社長の何を変えるべきかということに対しては後ほど話をしましょう。まずは、私のほうで分析をした財務状況と気になる点についてお話をします」
 まずは、売上高。前年は前々年対比で5%の減です。受注工事数、受注工事単価のいずれもが減少。市場自体も工事発注が2%減少、公共工事予算も2%程度縮小しているとの発表もあっていますので、ほぼ市場の縮小と連動する形で売上高が減少したと判断をしてよいと思います。一方、売上原価についてですが、この間の鋼材値上がりなどが反映されていると思われますが、原価率が5・9%増加している。鋼材の値上がり率が一般的には2%と言われていますから、残りの3・9%は自社内に問題があると見てよいでしょう。
 それから、販管費ですがこれは2年間でほぼ同額。変動費も含まれているため、売上高の減少に比例して下がった費用があると考えると、固定費が増加していると考えるべきでしょう。つまり、費用効率が悪化している。
 さて、ここまでは天野社長の方でもご理解いただいていますよね。前回、天野社長に考えてほしいと言った内容はここから先です。
 過去2年の財務諸表についてお話をすると、まずは売上原価の上昇について原因を天野社長はどこまで調査されたのかという点。経費についても同じく、社長自身でどこまで調査をされたのかという点です。先日は、質問をすると担当部長や経理部長の話ではという前置きが非常に多かった。課題と認識した部分についても、対策や指示は各部長任せ。私はこのような話を聞いていて、社長はこの会社を潰したいのかと思う程でした。社長が考えられている組織改革は、業績が順調な会社が行えばいいことです。危機的な状況において、組織改革は優先されない。現場の変革こそ必要なのです。その時に、現部長に指示を出しても変革できないことは天野社長ご自身が一番分かっていることではないですか?分かっていながら、部長に変革を任せようとするのは、どう考えてもおかしな話だと思いませんか?私からすると、天野社長自身が一番、変革から逃げているとしか思えない…。
 天野はギクッとした。自分自身では変革を意識し、行動に移していると思っていた。部長に任せるのは、組織である以上必要だとも考えていた。しかし、山川さんからは、それはうまくいっている会社のやることであって、会社の現状認識が甘いと指摘されたのだ。しかし、天野の心にはもう一つの気持ちもあった。
 「確かに自分自身で調査をしたり、現場で確認をしたりしていない。けれど、自分で動いて分かるものなのか。分からない場合、社員からも軽く見られるのではないか」
 その様子を見た山川は言った。「天野社長、確かに怖さや不安がおありでしょう。自分自身が動くことで分からない自分を再認識することがあるかもしれない。しかし、考えてみてください。当社は、今のまま変革を行えなければ来期はないのです。これまで続いてきた会社の歴史が途絶えるのです。社長が築き上げた信頼や信用もなくなるのです。その瀬戸際に立っていながら、自分のプライドや不安に負けていいはずがない。社長の下には、従業員、その家族、そして地域の皆の人生があるのですよ。小さなプライドによって、それらを失うことは絶対に避けなければならない。天野社長は、前回おっしゃった。これからは戦うのだと。社長が変えるべき点は、自分自身の弱さです。弱さに甘えることなく積極的に自分自身で課題を抽出し、解決策を考え、従業員と一緒に実行し、成果を得ることが必要なのです」
 天野は山川の目を見て言い切った。「自分の行動に歯止めをかけない。私自身で社内の課題を抽出し、改善策を考える!」
 山川は笑った。「そうです。天野社長自身が新しいマネジメントスタイルを示すことです。先ほど言った課題について、まずは次回までに調査、分析をしてください」

文/朝日ビジネスコンサルティング・古川 武史
takefumi.furukawa@asahibc.co.jp

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