Asahi Business Consulting|朝日ビジネスコンサルティング

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第3話 「光は見えるのか?」

ケース3.~某建設業経営者の挑戦

 前回の打ち合わせ時に、コンサルタントの山川から「変化すべきは社長自身のリーダーシップであり、自ら会社の課題を抽出し、改善策を体現することだ」と指摘された社長の天野。気持ちを入れ替え、これまで役員からの報告を聞くだけだった計数について自分なりの分析をすることを考えた。特に指摘された項目である原価率の上昇と経費効率の悪化については、しっかりと調査を行い、山川へ自分の口から報告をしたい。
 そう考えた天野は、社長室にこもり財務諸表の数字をエクセルへ入力していた。同社の財務会計システムは数年前に導入したが、税務申告が出来ればいいとしか考えていなかった。おかげで、帳票類はデータとして吐き出すことが出来ずに紙ベース。これだと、前回山川が言っていたような各種計数の分析をしようとすると非常に時間がかかる。また、数年間の比較も難しい。「そもそも、こういったところからわが社は出来ていなかったんだ。各種計数の比較をすることは、結果を振り返る上で最初のステップ。最初のステップも出来ていない会社だから、今、こういう現状なのだ…」
 半ば、他人事のように感じてしまう自分に「変わらなければ」と言い聞かせながら作業を進める天野であった。
 売上高は前年比5%の減少。受注工事数、受注工事単価ともに減少している。受注工事数の減少は、市場の低迷も起こっている。工事発注量が2%減少していると山川は言っていた。しかし、待てよ。わが社の受注が減少した原因は、市場の工事需要が減少したからなのか?
 そうだとすると、どの企業も工事受注数が減少している。伸びている企業はないはずだ…。しかしながら、他社で受注数が伸びている企業はある。減少していること自体が問題なのだ。同様に考えると、受注工事単価の減少でも同じことが言える。公共工事予算も2%程度縮小しているとの発表があったと山川は言った。だから何なのか。予算が減少しているから、当社の単価が下落してよいのか? いいはずがない。
 原価と販管費についても検証してみた。原価率が5.9%増加している。山川が言うように鋼材などの値上がりが特にこの2年激しい。しかしながら、5.9%まで上昇しているということはない。
 もっと細かく見ていくと、原料仕入高、労務費、原価経費のすべてが前年から比較して増加している。それから、販管費。金額としては前年と同額であるが、売上高対比で比較すると、経費効率が悪化している。各費用項目を比較していくと減少している項目もあるが、前年と同様あるいは前年以上に支出している費目もある。総合すると、若干の経費増と見えるが詳細を見てみると大幅に増加している経費があるのが事実である。これは何を意味するのか。
 この数値の変化についての原因を把握しなければならない。天野は、担当部長を呼び寄せた。今、把握した内容を確認していく。工事数が減少したのはなぜか、単価が下落した原因は何か、売上原価が増加しているのはなぜか、経費の増加は何に起因しているのか。
 役員からの説明は当たり障りのない内容だった。発注される工事数が減少している。それによって受注数も減少している。単価についても公共工事予算が減少しているために受注工事単価も減少している。原価は鋼材の値上がり。経費も、原油高騰に伴うプラス要因であり、仕方がないという説明である。これまでの会議の中で説明を受けた内容とまったく同じである。担当部長からしてみれば、これまでも説明をしてきた事項であり、今更、何を聞かれるのかという気持ちでいるようである。
 一方、天野も自分自身の変化を感じていた。担当部長の説明は確かにこれまでの説明と何も変わらない。しかし今の天野は納得できないでいる。自分自身で数値を並べ、考えてみたのだ。なぜ、環境が悪化しているとの理由で当社の業績が説明されるのだ。
 部長へ天野は問いかける。
 「発注される工事数が減少したからといって、当社の受注数が減少するのか。例えば少子化だからといって、すべての学習塾の生徒数が減るということなのか。そうではないだろう? 発注数が減少していれば、受注確立を高めるか、入札数を増加させることを考え実行するだろう。であれば、営業活動自体が問題ではないのか。 入札数が増加できていないのか、受注できない見積もりや活動に問題があるだろう。単価についても、原価についても同様だ。よく考えてくれ。受注できない原因や原価が下がらない原因を」 
 担当部長は背筋を伸ばした。明らかに今までの天野と違う。「分かりました。至急、分析をして資料を提出します」 
 天野は、担当部長との打ち合わせを終え、山川へ連絡を取った。
 「山川さん、現状の報告をしておきます。ようやく自分で数字を眺めました。受注工事数の減少、受注単価の減少の原因について考えました。市場状況を理由にすることなく考えました。結論として営業方法の見直しが必要だと考えています。市場環境を理由にして、思考停止になっていました。やり方はあるはずです。これに目をつぶっていては、先に進めません。また、原価と経費についても同じように考えました。原価については、原料仕入高は鋼材の値上がりによるものだと思われます。しかし、原価高はこれだけが原因ではありません。労務費の上昇と経費の上昇が見られます。これらから言えるのは効率性の低下です。作業工程を含めて改善の余地があります。経費についても同様で改善余地が多く見られます」 
 山川が答えた。「自分で調べれば多くの疑問を持つことが出来る。持った疑問に対して正面から考えれば何を行わないといけないかが分かる。今、話した内容が今回の変革の第一歩です。そこまで進んでいるのであれば、明日にでも伺いましょう」
 翌日、山川は天野を訪ねた。
 「昨日の話の続きをしましょう。昨日説明を受けたように改善すべき項目は、営業プロセス、工程の効率化、経費削減の3つですね。財務数値から導いた課題と現場サイドの話を総合して取り組むべき課題を設定しました。よく考えていただきました。それでは次に行きましょう。これらの課題に対して、どのようにアプローチをしていくかを考えましょう」 
 天野は言った。「3つの課題に対して、プロジェクトチームを結成し、対策を考えたいと思っています。いずれの課題も重要であり、すべてを解決しなければなりません。わが社は従業員数も少なく、プロジェクトチームを3つも結成すると日常業務を回すことすら厳しい状況です。しかし、やるしかない。そう考えています」。
 山川は天野が想像していた反応とは違った反応を見せた。
 「その気持ちは重要です。しかし、御社の体制を考えると同時に3つのプロジェクトを進めることは無理があります。では、どうするか。一番効果があると思われる課題を優先して取り組みましょう。私のほうで分析をしました。何が一番効果が高いか。これはバリュードライバーの感度分析といいます。その結果、原価削減が最も効果的でした。少ない労力で最も削減効果を与えることが出来ます。次は、この課題を深掘りしていきましょう」
 天野は、真っ暗な闇の中で光を見つけた。そんな気分でいた。

文/朝日ビジネスコンサルティング・古川 武史
takefumi.furukawa@asahibc.co.jp

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