Asahi Business Consulting|朝日ビジネスコンサルティング

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第4話 「どうアプローチをするのか?」

ケース3.~某建設業経営者の挑戦

 現状分析を行った後、バリュードライバーの感度分析から導き出した取り組むべき課題は「原価の削減」だった。(前号を参照)
 社長の天野は多くの財務数値および現状を把握していく中で、社内に横たわる多くの課題や問題を認識していた。しかし、コンサルタントの山川は明確に言い切ったのである。
 「当社の風土や人員を見た場合、多くの課題解決を掲げて前進することは決して早道ではない。一つの課題を明確に掲げ、それに対して全社員が一丸となって課題解決を行うことが有効である」
 この言葉を聞いてから天野はこれまでの社内での取り組みを思い起こしていた。
 「確かに当社ではこれまでいくつもの問題に対して改善活動と称する活動を行ってきた。数々の社内プロジェクトを立ち上げ解決策を考え実行してきたつもりだった。結果が出たのかと問われると明確に答えられない。問題を認識し改善を行っていこうと立ち上げたが、結果を追いかけることはいつの間にかおろそかになっていた。どれもこれも中途半端と言われればそうだった。それが、わが社の風土なのかもしれない。試してみよう。一つの課題を確実に解決するまで社員一丸となって取り組んでみよう。これを成功体験として、ほかの課題についても解決できる強い社内を作り上げたい」
 天野は、さっそく山川と打ち合わせをした。山川が言う原価削減とは何を指しているのか。この点を確認した上で、解決策を練らなければならない。
 天野は山川へ質問した。
 「山川さん、あなたの言う通り原価削減を当面の課題として全社で共有し、解決を図っていきます。しかし原価といっても、原料仕入れ高、労務費、原価経費のすべてが前年と比較して増加しているのが現状です。何から手をつけるべきなのか、どうやって改善していけばいいのか、について話をしたい」
 山川は答えた。
 「天野社長。現状把握が重要だということはこれまでの活動を通じて認識していただいたはずです。社長が言われるように、当社の原価は、原材料、労務費、原価経費ともここ数年上昇傾向にある。この現状を認識した上で、次に何をすべきか、どう考えますか」
 逆に質問で返された天野は、背筋に冷たい汗を感じた。
 「まただ。私がこれまでの自分から変わりきれていない。そうだ。現状を細かく認識し直し、どこに原因があるのかを把握することから始める必要があったのだ。安易に他人任せの改善をしてはならないのだ」。
 そう考えた天野は答えた。「原材料費、労務費、原価経費が計上されるまでの社内の業務を正確に把握することから始めます。」 山川は大きくうなずいた。
 その日の夜、天野は現場の責任者5人を会議室に集めた。集められたメンバーは次の5人である。
 原材料費を把握するために資材課の岡と豊嶋。労務費を把握する目的で、現場責任者の石丸、永田の2人。経費を把握するために、総務・経理部門の渡部という構成である。5人を前に天野は次のように話した。
 「みんなが知っているように当社は利益が出にくい体質となっている。コスト構造を徹底して見直し、利益体質の会社にすることが求められている。これまでも多くの問題に対して社内プロジェクトを立ち上げ解決に当たってきた。しかし残念ながら結果を追うことがいつの日からかおろそかになっており、結果を出せていなかった。いつの間にか立ち消えていたというものばかりだ。今回はこれまでのようなことは許されない。私自身も不退転の決意で、今回のテーマに取り組む。ここにいるメンバーと一緒になって必ず課題を解決する。今回、課題として取り組むのは原価削減だ。それも徹底的に。多くの課題が社内に存在し、手付かずの状態になっているのは私も認識している。しかし、多くのことを追いかけると結果がおろそかになると判断した。早急に原価削減を行った後、ほかの課題に取り組むことにする。この1カ月で原価削減へのアプローチを考えていく。ここに集まってもらったメンバーは、このテーマに必要不可欠な人だ。ここ1カ月程、私も社内の改善課題を考えてきたが、一番重要だと認識したのは、現場で起こっていることを正確に把握すること、つまり現状把握だ。原材料費については、どのような業務フローで発注が行われているのか?原価管理はどのように行われているのか、労務費については、どのような労務費計算が行われているのか、労務費管理は誰がどのように行っているのか。経費についても同じだ。固定費と変動費に分解して考えてほしい。どうして削減できないのかを」
 メンバーは全員が感じた。
 「今回の社長の意気込みはこれまでと違う。いつもの調子で、『問題がある、改善をしておくように』という軽い言葉と感じない。自分も一緒になって一から改善しようという強い意気込みを感じる。よし、私たちも現状を感覚ではなくしっかりと見つめ直し、会社を変えるのだ」
 メンバーは、各持ち場で現実をしっかりと確認していった。岡は通常行っている発注から検収までの流れを見つめ直していた。発注のタイミングはどうやって決めているのか、見積もり価格の算出は、検収は、価格交渉は? なぜ今の業務のやり方なのか、何が原価削減につながる動きなのかと問い直していた。岡と同様にほかのメンバーも自分の仕事を一から見つめ直し、原価削減をなぜ行えないのかを考えた。現状の仕事のやり方を原価が削減できないのはなぜかという観点から見つめ直すという初めての経験をメンバー全員が行った。全員が驚いた。「今まで何の疑問もなく行っていた業務自体に問題があった。何気なく行っていたことが原価削減につながらない一番の問題だったのだ」
 2週間後、各メンバーはそれぞれに与えられたテーマに沿って現状を把握し、課題点を抽出してきた。メンバーから課題についての多くの意見が述べられた。
 原材料費について岡と豊嶋から次のような意見が出た。
 「鋼材や石油などの高騰の影響は確実にあります。しかし社内業務の流れにも大きな問題を抱えています。受注から施工までの時間的な余裕が持てない業務のあり方です。時間がないため必然的に発注先はいつも固定され、価格交渉は全くといっていいほど行うことが出来ていません。営業と技術の間の連携が取れないことによる問題がある。また在庫管理が不徹底なため、在庫があるのに発注を繰り返すケースが見られます。在庫管理が正確に行えれば発注量自体も抑えることが出来る」
 石丸、永田から労務費についての課題が出された。
 「見積もり段階で労務費算出根拠が不明確になっています。予定工数の把握が甘すぎます。大体これくらいだろうというあいまいな判断になっています。このため、実際の労務費が見積もりより大きく上ブレをしています。工事管理者の能力も問題です。労務費を抑え、工事を完了させるためのコントロールが出来ていません。」
 最後に総務・経理部門の渡部から経費についての報告である。
 「固定費についての削減は別途考えなければなりませんが、変動費部分で消耗品や器具備品費についての管理が甘すぎます。各個人で購入を許している現状では、工具などの購入が大きくなる。道具の扱いも雑だし、無駄な購入も多いと推察されます。ほかの経費についても同様で、あまりに現場任せの部分が多くコントロールできているとは言えません」
 最後に山川が言った。「皆さんが考えてこられた課題はすべて間違いがないものです。これから皆さんが解決すべき課題と考えてください。原価が高い原因が今、明確になったのです。これをどのような業務の流れに変更することで解決をするのか。この答えを考えていきましょう」。天野は思った。「動き出した。会社が変化していくのはもう少しだ」

文/朝日ビジネスコンサルティング・古川 武史
takefumi.furukawa@asahibc.co.jp

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