Asahi Business Consulting|朝日ビジネスコンサルティング

朝日ビジネスコンサルティング 福岡・九州を中心にサービスを提供するコンサルティング会社です

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第5話 「短期的利益と長期的利益」

ケース3.~某建設業経営者の挑戦

 前回までの打ち合わせで「原価削減」への取り組みを最優先課題と位置付け、社内各部署の責任者からなるプロジェクトチームを立ち上げた。各メンバーに改善すべき課題を抽出させたところ、原材料費、労務費、経費のすべての要素に未整備な業務プロセスがあることが浮き彫りになった。施工日までの時間的な余裕がないことから高値での仕入を行わざるを得ない現実、見積もり時間が確保できないために算出された労務費がいつも低く見積もられ、実際原価と比較すると異常に低い数値で予算立てがされること、経費の支払い管理が行われていないために発生する同一商品の購入が発生し結果として起こる経費増…など。社長の天野は、これほどまでに毎日の業務が無駄な、いや効果的でない業務となっていたのかと慌てた。また、これらすべての業務を効果的な業務へと変更するように指示を出したのである。
 プロジェクトメンバーは、以下の改革を推進した。
 資材課の岡と豊嶋。2人は、原材料費が上がっている現状を、在庫管理の不徹底にあると考えたため、原材料の在庫管理に注力した。 現在の在庫管理では、払い出し管理がなされておらず、現時点の在庫は実際にカウントをしないと分からない。また、仕入れた商品コード、商品名の管理がずさんであり、同一の商品であっても担当者によって呼び名が変わっていた。つまり、同一の商品にもかかわらず、別の商品として管理されてしまっている状況だった。これらを改善すべく2人は、現場の人間を交えて、現状の在庫をきっちりと一覧化することから始めた。
 月の途中なので、在庫数量は上下するため、まずは現時点で在庫管理が必要な商品名を一覧化した。この一覧をコンピューターシステム上で管理し、仕入れ、あるいは投入で在庫数量を変更させる単純な仕組みを作った。これにより、今、当社に在庫があるのか、無いのかが明確になった。発注者は、在庫の有無をシステム上で確認し発注することが出来るようになった。これまでの在庫があるにもかかわらず発注をしてしまうことはなくなった。
 石丸と永田は労務費算出根拠を明確にすることに奔走した。担当者の能力の差が大きいことを改善するには時間がかかるため、標準的な作業者をピックアップし各作業の標準時間を明確にした。これを社内的な労務費単価算出根拠として工事管理者へ通達した。これまで工事管理者が算出する時間にはバラツキが見られたが、この数値を用いることによって見積もり算出時のバラツキは消えた。また、この標準時間に合わせることが社内工事担当者の目標となり、ゆっくりではあるが技術力を付けていく必要性を感じた社員が自ら技術力アップのために取り組むようになってきた。
 渡部は、経費使用に関する社内ルールを制定した。これまでは工事単位あるいは工事担当者の判断に任せて購入していた工具などを備品として管理することにした。多くの現場からは作業負荷がかかるとの声が出たが渡部は現場を一つひとつ回り、工具類の購入が非常に多いこと、購入したものがどこに行っているか不明確なこと、原価を下げる必要性があることをきっちりと説明しただけでなく、いかに作業負荷がかからずに管理できるのかを現場の人間と一緒に決め、ルールとした。この活動を冷ややかに見ていた社員も、いつの間にか渡部の真剣さを感じ、協力するようになった。
 ここまでの取り組み内容を社長の天野は山川へ伝えた。天野としては、前に進んでいることに大きな手応えを感じていた。

 「山川さん、社員は皆がんばっている。この取り組みを続けていけば立ち直ることが出来る」
 山川はきっぱりと言った。
 「まだ半分にも到達していない。各メンバーの取り組みは長期的に有効な手立てばかりだ。社長が言われるように、この取り組みを続けていけば長期的な改善は見られる。間違っていない。しかしながら、今すぐに手を打つべきところへのアプローチは行えていない」
 天野はムッとした表情を浮かべた。山川は、その表情の変化を感じたが素知らぬふりで話を続けた。
 「プロジェクトメンバーは出来ることを、しっかりと進めている。この努力は並大抵のものではない。私の想像以上のスピードで改革を進めてくれている。しかしながら、彼らでは出来ない改善個所…、あなたが自ら行わなければならない個所は、まだ何も進んでいない。それは、どこか。前回の会議の中で話題になった仕入れ価格の交渉という点だ。この問題は、受注と施工日までのタイミングの問題、つまりは営業サイドにおける交渉の問題であるし、現在の仕入れ先との非常にシビアな交渉だ。これはプロジェクトメンバーである現場担当者では非常に難しい。あなたはそれを理解しているはずだ。しかしながら、一向に動こうとしない。これでは短期的利益の回復は見込めない。何をしているんですか」
 天野は感じていた。社内が変革を始めた時点で自分も動かなければならないことを。しかしながら、何から手をつけていいのか分からない。しかも、それを誰にも相談できずにいたのだ。その点を、まさに今、山川から言われたのだ。
 「自分でも感じている。山川さん、あなたに教えて欲しい。どういう手順で、どのように進めればいいのか」
 山川は言った。「変わることが難しいというのは、第一歩を踏み出すことにちゅうちょするからだ。自らの足らざるを認めて、教えを請うことは難しい。しかし社員はここまで変わった。社長自身も行動しよう」
 天野の取り組みが始まった。山川から言われたように仕入れ先リストを仕入れ金額順に並べ替え、上位社をピックアップし、仕入れ商品の相見積もりを取らせた。これを交渉の材料とし、また現在の社内取り組み内容を簡単にまとめ仕入れ先各社の社長を訪問した。めったに外部の人間と交渉をしたことがない天野の行動に仕入れ先の社長は、驚くとともに協力することを約束してくれた。 <> また営業先にも営業担当者と共に訪問。現在の受注方法では原価算出が難しい状況であることを相談するとともに、発注方法を模索することで原価を削減することが出来るかもしれないことを話し、今後の発注改善へ向けた検討を進めることで合意を取り付けていった。
 これらの取り組みが進み、短期的には売上高原材料仕入れ金額率の削減が、昨年比3%以上と効果が表れ、社内各部所管のコミュニケーションも一段と活性化し、長期的な利益確保が見えてくる状況になった。
 天野は言った。「頭で考えることは確かに重要なことだと思う。しかし、行動を起こすことが必要なんですね。私自身がそうだった。行動を起こすことをちゅうちょし、その理由を考えることに求めていた。考える前に動くことが今の時代のキーワードなんだと身に染みて感じました」
 これからの天野の行動は、社内だけでなく、取引先の変革にもつながるだろう。

文/朝日ビジネスコンサルティング・古川 武史
takefumi.furukawa@asahibc.co.jp

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