Asahi Business Consulting|朝日ビジネスコンサルティング

朝日ビジネスコンサルティング 福岡・九州を中心にサービスを提供するコンサルティング会社です

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第2話 「新たなる認識」

ケース4.~飲食店経営者の挑戦

 メーン銀行の担当者・鈴木から会社の状態について質問され、各部署の責任者の認識と自分の認識に大きな差があると感じてから社長の田宮は数字での社内把握を責任者とともに始める決意を持った。鈴木から指摘があった管理職との共通の認識作りが必要だと感じたからである。
 鈴木への説明に同席した経営企画部の岡田と販売企画部の東の2人を中心に、各種計数によって現状の課題を抽出していく作業を始めた。
 これまで作成していた管理資料は、各種計数の把握という面ではきっちりと出来ていた。管理面では、経営企画部で作成されている店舗ごとの売上高、原価および利益の推移資料が作成されている。売り上げに関する内容は、POSデータを基に販売管理部で作成され、客数および客単価の推移を時間帯別、顧客属性別に把握している。これらの数字を基に田宮は会社の状況と対策を考えてきていた。売り上げが全体的に落ちている点を景気などの外部環境の悪化によるものだと判断してきたし、利益を出すためのコストダウンも図ってきた。店舗ごとの売上高の変化や顧客変化を見るよりも、売り上げが落ちていることに対する対策として新規メニューの投入という手法でこの難局を乗り越えようと考え、実践をしてきた。
 今回の会議の中でも、これらの数字を用いて管理職へ説明を行った。全員が、同じように考えるに違いないと思っていた田宮にとって意外な反応が返ってくる。一通りの説明を行った田宮は、管理職の顔を確認していった。どことなくしっくりと来ていない管理職が多いように感じた。
 「今、私が行った説明に対して質問があるのであれば言ってほしい。また認識が違うという人間も発言をしてほしい。この会議は、数字で現状をとらえるだけではなく社内で現状に対しての共通認識を持つこともテーマなんだ。これまでの大きな数字だけでの現状把握ではなく、ここの店舗あるいは個々の顧客の数字レベルまで落とし込んだ中で現状を認識し直し、社内改善の糸口をつかみたいんだ」
 明らかに、これまでの田宮とは違っていた。管理職の全員がそう感じた。これまで、会社の現状を一番知っているのは自分であって、戦略やメニューの決定まで自分で行ってきた社長の姿しか知らなかった。しかし、今回は違う。自分が見えないことを前提に、全員で現状の認識を新たにしたいと言っている。大きな違いであるし、それだけ鬼気迫るものを社長の姿から感じていた。また、田宮自身も同じように感じていた。担当が代わったばかりの銀行員から会社全体を細部にわたって検証すべきと言われた時に感じた強い焦りだけではなく、自分自身の口から全員で考えたいと発言した気持ちの変化をはっきりと認識したのである。
 「会社全体の数字で見ると、外食産業全体と同じように売り上げの減少傾向が見られます。これは社長が言われたとおりです。店舗のエリアマネジャーを任された私が現場で感じるのも同じです。売り上げは下がっている。しかしながら、原因は何かと聞かれると私が現場で思っているものと、社長が言われるメニューに飽きたのだということは多少のズレがあると感じています。私が感じているのは、明らかに店舗へ来ていただいている顧客層が変化しているということ、それに、顧客の来店動機に変化が見られるということなんです」
 エリアマネジャーを10年続けている山田が発言した。
 いつもであれば、「君は全体が見えていない」と社長に一喝されるはずだが、今日はやはり違った。「もっと詳しく話をしてくれ。現場のことは君たちが一番把握しているはずだから」と田宮が発言したのである。山田は続けた。
 「売り上げ減少の兆しが現れはじめた時点では考えても見ませんでした。しかし長期化してくると私もさすがに変だなと感じたのです。これまでは、ほとんどが家族連れでした。今でも家族連れが多いのは変わりはないのですが、全体に占める割合は明らかに減っています。若者の来店も増えていますし、ビジネスシーンとして使用されるケースも増えてきたように感じています。つまり、これまでの主要顧客層が減少しており、新たな顧客層が増加している。また、来店された顧客の注文までの時間も明らかに減少している」
 「来店されてからオーダーまでの時間が短いなと感じていたのですが、なぜかがピンと来ませんでした。最近ですが、ようやく仮説らしいものが自分の中で構築されようとしています。どのような内容かというと、目的型の来店ということです。当店に入店される場合には、すでにオーダーしたいものが決まっている、あるいはジャンルが決まっているということです。つまり、すべてのメニューを見ることはなくなっているということではないかと思うのです」
 こう発言した山田の後に続くように、多くのエリアマネジャーが同様の傾向であることを口にした。これが数字の裏に隠れる現状なのである。大きな数字を把握したことで、あまり顔を出すことがない現場のすべてを把握出来ていると思っていた田宮は、自分のことを恥ずかしく思ったし、これまで取り続けてきた改善策を怖くも思った。
 「今日、この場で話をしてきたように現状の把握を、このメンバー全員で行って行く。これまでの認識にとらわれる必要はない。現場のことは、現場が一番よく認識していると私も感じているし、今日、あらためてそう感じた。この現状認識からがスタートなんだ。新しい展開を図るためにも、今日から1カ月でまとめ上げたいと思う。岡田と東で集約していくように」
 田宮は思った。
 「自分一人の力で会社を把握することよりも、各現場の責任者が感じているものを吸い上げることが今は必要だ。各係数の裏側にある現実。これをしっかりと把握しなければ、改善策も経営計画もあったものじゃない。これまでの私に足りなかったものは、この認識なのだったのだ。大きな数字を見るだけで、物事を考える怖さとはこれだったのだ。常に現場主義。小さいところから考える。そういえば、アメリカの小売業経営者も、同じことを言っていたな…」

文/朝日ビジネスコンサルティング・古川 武史
takefumi.furukawa@asahibc.co.jp

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