Asahi Business Consulting|朝日ビジネスコンサルティング

朝日ビジネスコンサルティング 福岡・九州を中心にサービスを提供するコンサルティング会社です

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第3話 「新たなるシナリオ」

ケース4.~飲食店経営者の挑戦

 苦しい社長室に、社長の田宮、経営企画部の岡田、販売部の東の3名が顔をそろえていた。前号で記載したように、大きな数字を見て、会社の状況を分かっていた気になっていた3名にとって、前回の会議内容はこれまでの自分の思考や行動を完全に否定されたようなものであった。
 (前号記載の)エリアマネジャーとの議論の中で「現場主義」「小さく考えること」の大切さを再認識した。明らかに変化が現れている顧客動向を見過ごして、これまでと同じ方策を立て実施してきた。効果の薄い改善策を実行してきたのである。家族連れが当社のメーン顧客であるという認識に立ったメニュー開発や販促企画は、ある時期以降、急速にその効果を失っていた。それに気付かずにいたのだ。当社の店舗を訪れる顧客が少しずつではあるが、確実に変化してきていたことへの認識が薄かった。
 しかしながら、会社を継続的発展へと導くためには、受けた衝撃を打破し、新たなシナリオを描かなければならない。田宮、岡田、そして東の3名は強烈な自己反省を行うとともに、前回会議で感じた「現場主義」「小さく考えること」を中心に、新たなシナリオ策定へ向けた取り組みを始めた。
 まず行ったことは、現状店舗の視察および店長へのヒアリングである。視察に関しては、あえて店舗へ視察日程を知らせずに、一般客を装って行った。これは、日常の店舗状況、顧客動向を把握すべきという認識から出た発案である。田宮が、岡田が、そして東が、それぞれ手分けして店舗を訪れた。
 訪問調査は今までの印象的記載ではなく、手元にフォーマット化された調査リストを携えている。時間帯別の顧客属性、店舗の商圏エリアの人の動き…等々。顧客に近づくためのものさしを準備し、自分の目と耳で感じ取った状況を書き取っていく。そして、最後に同日のレストランPOSから時間帯別のオーダーリスト、客単価リストを受け取り、調査リストに添付する作業を行った。
 また、同時期にすべての店長へのヒアリング調査を行った。先の会議の中で認識をした顧客変化を中心に行った。過去の顧客層と現在の顧客層、顧客が求めていると感じているもの等々。これまで、本部中心に考えて行ってきたメニューについての指摘や考えについても現場の店長が、自店の顧客を想像しながら話を行えるように工夫した。調査結果は、販売企画部のスタッフが集計し、リスト化していく。
 調査を始めて約2週間。社長室に集まった3名が調査結果に目を通す。
 社長の田宮が思わず、顔を強張らせた。これまでの自分の戦略の中心に置いていた家族連れ層が極端に減少傾向にある店舗が多い。変化があまり見られない店舗もあるが、過去、客数が大きな基幹店舗ほど、顧客が大きく変化しているという結果だった。また、前回の会議の中でも話に上った目的来店顧客(待ち合わせや、気分転換という目的を持って短時間の店舗利用を志向したり、メニューを最初から決めて訪問される顧客)が非常に多いということも特徴的な結果だった。家族連れが多い店舗でも、メニューを見てから商品を決めるというよりも、席に着いたら注文内容が決まっているという状況である。
 田宮は、焦った。これほどまでに自分が思っていた顧客と乖離が起きていることをどう自分の中で受け入れるべきなのか…。
 岡田は思った。これだけの状況変化が起こっているとすると、当社ではまだ現状でもやるべきことが多い。すべての手を尽くしての結果が現状でなければ大丈夫だ。
 東は思った。何をすればいいのだ。これまでの顧客と違ったターゲットに対しての方法論を当社では持ち合わせていない。
 3者3様の思いの中で沈黙が続く。
 岡田が発言した。「今の当社があるのは、これまでのやり方があったからです。しかしながら、現状の窮屈な経営状況を生んでいるのも当社のこれまでのやり方です。何も過去を反省するばかりではなく、現状に対応する策を考え、実行しましょう」
 この発言で田宮の目つきに変化が起こった。「そうだ。今は後ろを振り向く時間はない。先を見据えてかじを切らなければならない。東さん、当社はどのような展開をすべきだと思う?」
 東は、急に声を掛けられたことにびっくりしたが、コメントした。「残念ながら現時点で、当社で確実だと思われるプランはありません。これまではずっと家族連れのことしか考えていませんでしたので…。しかし、考える方法はあります。顧客のことを知るためには顧客に聞けばいいのです。現場主義とはそういうことではないでしょうか」
 さっそく、エリアマネジャーによる緊急対策会議を招集した。議題は、現状の顧客へ提供すべきメニューやサービス。会議までに自店の顧客を分析、調査し、仮説を持って臨むことを義務付けた。会議では様々な意見やアイデアが出された。これまでは、本部中心に物事が決められ、それを忠実に実行するだけだったマネジャーが、自分たちで感じた目の前の顧客のことを考え試行錯誤する。初めての経験であるにもかかわらず、活気のある、実りのある会議となった。
 会議の決定事項は次の通りだった。
 メニューに関しては、AプランとBプランの2種類を作成し、各店舗特性によってどちらのメニューを使用するか選択する。店舗分析の結果、家族連れ向けの店舗とそれ以外店舗に分類することで顧客満足度を高めることが出来る。しかしながら、オペレーションコストを考えると、すべてのメニューを掲載しては利益が出ない。そこで、店舗特性に応じた選択を行う。
 サービスに関しては、これまでの内容を変更しない。これまでも受け入れられている丁寧な接客を継続徹底し、さらに顧客満足度を高める。
 田宮は、前号に引き続き思った。「現場で、小さく、考えることだ」と。

文/朝日ビジネスコンサルティング・古川 武史
takefumi.furukawa@asahibc.co.jp

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