Asahi Business Consulting|朝日ビジネスコンサルティング

朝日ビジネスコンサルティング 福岡・九州を中心にサービスを提供するコンサルティング会社です

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第4話 「見えない壁」

ケース4.~飲食店経営者の挑戦

 飲食店チェーンを営む田宮は、(前号で記載した)新たなシナリオの実践に入った。ここまでの固定概念を打ち消し、現場のマネジャー達との会議を繰り返してきた。その結果、策定されたシナリオ。店舗毎の特性を現場責任者が見極め、メニュープランの採用を行うこと、メニュープランは原価削減の実現も含めて2つを用意すること、サービスの更なる向上を目指した接客技術のアップ…。現状の危機的な状況を打破するためには、現場の力を信じるしかない。そう考えた田宮の決断だった。
 新たなシナリオ策定の中心的な役割を担ったエリアマネジャ達は、自分たちが判断をした店舗の状況、顧客ニーズ・動向が正しいかったのだということを証明しようと必死に売上や利益を追いかけた。自らの店舗分析が、そして採択したプランが正しければ、必ずや売上、利益面で効果が表れるはずである。
 家族連れが主要顧客だと考え、メニュープラン等を構築してきたものを変更したY店。
 立地は駅前の繁華街に位置し、駐車スペースも大きく確保している。利用される顧客の大部分が目的型の来店。平日の午前中は、時間調整のための利用。午後から待ち合わせや勉強、仕事での利用が多くなり、夜は学生が多くなる。休日は、家族連れも多くはなるが、どちらかというと平日の流れがそのまま継続されている。これまでのメニューは、家族連れに合わせていたため、軽い軽食やおつまみは少なかった。また、ドリンクにしても種類は限られていた。
 そこへ、新たなメニューを投入した。顧客実態に合わせる形で、家族連れメニューではなく、単身者向けメニューともいうべきビジネスパーソンを中心とした構成を取った。ドリンクについては、種類を増やし、1来店に対し、2度、3度の注文をもらえるだけの構成を考えたメニューである。家族連れ顧客の反応に怖さは残るものの、大多数を占める顧客に中心に据えたメニューとなった。
 結果は、どうであったか?
 大きな混乱は起きず、家族連れの顧客構成も変更がない。一方で、平日に利用されていた顧客の数が大幅に伸びた。これまでのビジネス利用だけでなく、主婦層の利用も急速に膨らみ顧客数の増加となった。客単価についても、これまでとほぼ変化なかった。ビジネス利用が増えると客単価の低下が懸念されたのであるが、注文回数のアップが起こり、メニュー改良の効果が表れたものだと言えた。エリアマネジャは、大きな安堵感と「現場で物事を考える」強さを実感していた。
 他店舗も概ね状況は同じであった。しっかりと自店舗の顧客を把握した結果であった。当然のことながら、シナリオ策定に参加したマネジャは手ごたえを感じた。現場の従業員もやりがいを感じることが出来た。
 社長の田宮、経営企画部の岡田そして販売部の東も胸をなでおろした。このシナリオに沿って、難局を乗り越えられると考えた。
 しかし…である。新たなシナリオに沿ったアクションを初めて4ヶ月目に入ったところで、事態は大きく変化してきた。増加してきていた顧客数が、以前のレベルまで下がってきたのである。
 実はこの現象は、アクション実施後の1カ月後から見えていた。顧客が目新しく変化していたのである。利用者数は増加しているが、顧客の定着率という観点から言うと、低下傾向にあった。現場の社員や店長、エリアマネジャは感じていた。しかしながら、アクションを取ることをしなかった。それほど、大きな変化だという認識が薄かったのである。それよりもむしろ、成功したことへの喜びのほうが大きかった。
 「同じことの繰り返しではないか…。」
 田宮は、この現実を前にして、これまでの社内を思い出していた。
 一つの成功が見えた段階で、自分も含めて全員がホッとしてしまう。気を抜くわけではないのだが、成功時点で表れる変化の予兆を見逃すことが、これまでも多かった。家族連れがメーン顧客だとの認識を変えることが出来なかったのもここに原因があった。今、起こっている原因も、この予兆を見逃したことによるものだ。自分を含めて、何度も同じ過ちを繰り返している現状に悔しさをにじませていた。
 岡田と東へ田宮は伝えた。「変化の予兆を見逃した結果だ。至急、前回のメンバーを集めて対策を立てよう。全員集合だ!」
 岡田と東は田宮の変化を感じた。これまでであれば、「全員集合だ」という言葉など田宮から聞いたこともなかった。少なくとも。新たなシナリオ策定時点から大きく変化してきている。
 エリアマネジャ会議の中では、現状の説明だけでなく、今回の原因が変化の予兆を見逃したことによるものだという説明が付け加えられた。それは、現場だけでなく社長以下、経営陣についても同様だとの認識にたった、新たな社内改善の方向性への示唆に他ならない。顧客の変化を常に感じ取って、それをサービスや商品へ反映させるという当たり前のことを、当たり前のように出来る会社への変革。
 実は、変革への見えざる壁は、社内風土にあったのである。
 田宮は思った。「見えないもの」への対応は出来ない。はっきりと認識した課題でないと対応なんか出来るはずがない。これまでは、社内風土の根本にメスを入れることが出来なかったのだ。もう一山。ここを乗り越えるまで、戦いは続くな…。
 更なる田宮の変革への戦いは続く。

文/朝日ビジネスコンサルティング・古川 武史
takefumi.furukawa@asahibc.co.jp

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